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♪エンダーーーイアーーーけびんこ♥(cv津嘉山さん)、および、幻に終わったダイアナ妃主演『ボディガード2』製作極秘計画、の巻

最初に、けびんこ♥、って、呼んでもいいです?
飯森盛良のふきカエ考古学

けびんこ♥。ワタクシの世代のスターです。むかしっから映画館(というか人混み全般)が苦手だったワタクシ。映画は好きでも映画館は嫌い。映画の九割はTV画面を通して見てきました。で、けびんこ♥。お声が民放各局ともに津嘉山正種さんでほぼFIXされてましたよね?まあ以前ウチでやったゴールデン洋画劇場版『アンタッチャブル』(R.I.P.根津甚八さん…)のような例外もあるにはありますけど、基本TVではほぼ津嘉山さんじゃないでしょうか。

ここからしばらくは個人の印象論、独断と偏見を書かせてください。で、なかなか、ここまで固いFIXというのも滅多にないような気がしないでもありません。ワタクシ世代のスターで、例えばスタならささきさん羽佐間さん玄田さん、シュワでも玄田さん屋良さん。ブルース・ウィリスだと野沢さん村野さん樋浦さん、ハリソン・フォードで村井さん磯部さん、エディ・マーフィ山ちゃんか下條さんか、と、「みんなちがってみんないい」状態でイメージが分散しており、スターごとというよりは作品ごと・役柄ごとで、どの声優さんのお声だったかのイメージがあって、「この外タレにはこの声優さんしかいない!」という固さにまで固まってるFIXは、実は意外と多くないのでは!?とも思ったりしてます。ここまで固いのは、あとは今だとセガールの明夫さんとか?

こうも固まると、「原音では聞きたくない。ふきカエでしか見たくない」とか「本人の声が本人らしく思えない」という、もはや、ふきカエの極北にまでいっちゃうものです。セガールなんか、本人は弱そうな甲高い声なんですよね…。けびんこ♥の場合だと、本人の声をそもそも思い出せない。まったく印象にない…。

感想はこれくらいで。それほど津嘉山さんの印象が定着しきっているけびんこ♥なんで、たとえば代表作『ボディガード』は、ソフト版もゴールデン洋画版も日曜洋画版も、すべて津嘉山さんがアテられているという、余人をもって代え難いほどの状態になっております。そういう例が他にないわけではありませんけど、珍しい。

で、今回わがザ・シネマでは4月、その『ボディガード』両TV版を放映するんです。ソフト版はやりません。各自買うかなんかして見てください。今やカネいくら積んでも見れない状態の、1995年のゴールデン洋画版(こっちはノーカット音源だったのでノーカット)と1998年の日曜洋画版(こっちは残念ながらカット版)を、ウチではHD画質に塗り直してやります。

これまでも「聞き比べ」と称して、それこそインディ・ジョーンズの村井さん磯部さん聞き比べとか、ビバリーヒルズ・コップの富山さん下條さん山ちゃん聞き比べとかをさんざんやってきたんですが、さすがに同じ方がふきカエられた別バージョンを放映するのは今回が初。「それやる意味あるの!?」という気がしないでもないですけど、意味ちゃんとあるんです。

まず、これは出来不出来の話ではないけどね!とは強くお断りした上で言いますが、当時見たバージョンじゃないと違和感あるんですよね。特にVHSで録画して何十回も見たような思い出の作品は、音が耳の奥の方にまだ残ってますから、別バージョンを聞くと、たとえ同じ津嘉山さんのお声でも「このバージョンじゃない!」という気がしてしまう。翻訳も違うし、津嘉山さん以外のキャストは違うわけですから当然です。

ワタクシなんて、生涯ベストでセリフ完コピできるほど100回近く見ている『スタートレックII カーンの逆襲』は、カーク船長cv矢島正明さんが同じで、翻訳まで同一台本だと思われる、ソフト版ふきカエ(ディレクターズ・エディション特別完全版のこと)を見た時、「こんなのボクちんの好きなカーンの逆襲じゃないやい!」とさんざん駄々をこねた覚えがあるくらいです。微妙にブレスのタイミングとか、言い出しの早い遅いとかが、VHSデッキが黒煙吹くほどに見まくった水曜ロードショー版『カーンの逆襲』とわずかに違うってだけで、それぐらい違和感を感じちゃうんですから、マニアってのは迷惑なもんです。普通の人たちごめんね…。ガンダム特別版事件なんてのもありましたな。

普通の人たちにも解るように例えると、好きな曲のライブ版を聴いた時の違和感に近い。好きな歌手本人がちゃんと歌ってるんだし、ライブでのパフォーマンスが下手だったわけでもないんで、決して出来不出来の問題ではないんだけれど、スタジオ録音版が耳に馴染みすぎちゃってるんで、アレンジとか発声とかBPMとかがちょっと違うだけでも「コレじゃない!」感がハンパない、という、あの感覚に似てる。

ということで、ゴールデン洋画版に馴染んだ人はそれじゃないと受け付けないし、日曜洋画で見た人にとってはそのバージョンだけがワンアンドオンリーなMy『ボディガード』なんですから、同じ津嘉山さんでもその2つはまるっきし別物なので、放送する意義はあろうかと。ソフト版も津嘉山さんで良いんだけど、自分にとって馴染み深いバージョンじゃないんだよなぁ…でも金出して見れるの今それしか無いしなぁ…とお困りだったアナタ!今回のTV版W放送の貴重な機会、ゆめ、お録り逃しなきように!!

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ちょろっと上でも書きましたが、この両バージョン、翻訳が違うんです。一方のバージョンにだけ執着してるわけでは全然ないという方は、純粋に「聞き比べ」企画として楽しんでいただければと思うんですが、今回は津嘉山さんのお声は一緒なので、声よりも、翻訳とその背景の哲学の違いを味わってみてはいかがでしょう?

たとえば、けびんこ♥扮する主人公フランクが、ホイットニー・ヒューストンのマネージャーに大金で雇われ(人気歌手がストーカー被害を受けているので彼はボディガードとして雇われた)、彼女の豪邸を訪れる、2人の初対面シーン。角型4灯の80年代くさ~い顔したシボレー・エルカミーノを運転して、けびんこ♥はハリウッドにある豪邸へとやって来ます。この車のチョイスが上手い!おっさんカー独特の華のない地味顔、ただし車体後部は実用性重視でヘビーデューティー感あふれるピックアップトラックときた!スーツ着た勤め人の生真面目さ×ワイルドな冒険野郎魂の融合です。けびんこ♥演じるフランクという、シークレットサービス上がり(つまり元お堅い公務員)の凄腕ボディガードの人となり、趣味嗜好、漢の美学までを、この車だけで見事に表しちゃってるんですから、映画として上手っ!総合藝術はこうでねえと!!

閑話休題。で、豪邸の大鉄扉の前まで来てインターホンを押す。バットかなんかでボっコボコにぶっ叩かれ壊れかけてるインターホンです。暴力的なイタズラをする不審者が近所に出没してるんだ、なのにセキュリティ甘々だ、という劇中状況が、このショット一発で解る。またも上手っ!こうでねえと!!そして、スピーカーの向こう側の誰か(守衛?付き人?)と話すけびんこ♥。

ここゴールデン洋画版ですと、

スピーカー「(ノイズ混じりの音で)はぁ~い?」
フランク「フランク・ファーマーです。取次を」
スピーカー「(ノイズ混じりの音で)んぁ!?」
フランク「フランク・キャプラです。どうぞ取次を!」
スピーカー「なんか用?」
フランク「…ええ。デパートからご注文のライオンをお届けに」
スピーカー「ご苦労さん」

開門

というやりとりの翻訳になっています。フランク・キャプラの「キャプラ」のところにアクセントが置かれている。フランク・キャプラとは往年の映画監督で、『或る夜の出来事』とか『スミス都へ行く』とか『素晴らしき哉、人生!』とかで知られる巨匠。同名のギョーカイ人(この時点で故人)のビッグネームをテキトーに騙れば開けてくれるだろ、とでも思ったんですかねぇ?

あと「ライオンをお届けに」ってのは、『ヒッチコックの鳥』のついばまれ女優ティッピ・ヘドレンが、ライオンを自宅で放し飼いしていたことが実際にありまして(…鳥よりライオンの方がよっぽど危険だと思うのだが。しかも幼い実娘メラニー・グリフィスに飼い獅子をじゃれさせてた…死にてえのか!? その衝撃の写真がコチラ(海外サイトへリンクします))、つまりこの発言、ハリウッドの浮かれた馬鹿セレブに対する当てこすりです。どうせそういう浮世離れした暮らししてやがんだろ!?と。

で、もう一方の日曜洋画版ですと、

スピーカー「(ノイズ混じりの音で)はい?」
フランク「フランク・ファーマーだが、Missマローンに」※ホイットニー・ヒューストン演じる本作ヒロインが人気歌手であるレイチェル・マローン
スピーカー「(ノイズ混じりの音で)なに?」
フランク「電話を発明したアレクサンダー・グラハム・ベルだ」
スピーカー「アポイントは?」
フランク「あ~、亜鉛の原子番号は30。これでわかるだろ」
スピーカー「門を開けます」

開門

という流れ。どっから亜鉛の原子番号は出てきたんだ!? 唐突でちょっと解釈に苦しみますな。真面目に取り合っていないような応対だし、スピーカーも壊れててまともに通話もできてないっぽいので、どんなテキトーなこと言っても開門するだろ、というナメた態度ってことか?または、これもセキュリティ抜き打ち検査のひとつか?

と、このように、両バージョンで言っていることが全然違うんですが、これ、オリジナルの英語脚本に忠実なのは、日曜洋画の方なんです。ゴールデン洋画の方はいわゆる「超訳」のようなものですな(「超訳」は株式会社アカデミー出版さんの登録商標です)。翻訳は前回この場でご紹介した『鷲は舞いおりた』と同じ飯嶋永昭さん。「フランク・キャプラ」とか「ライオン」なんて英語セリフでは一言たりとも言ってないんですよ。いいのか!?いいんです!

たとえオリジナルから離れたとしても、より面白く、より解りやすくという哲学は、さすが、芸能人ふきカエの名作&迷作の数々を世に送り出してきた娯楽の殿堂ゴールデン洋画劇場ならではのサービス精神というべきでしょう。また、原語に忠実な日曜洋画劇場版は、さすがは大淀長翁の番組だけあって、端正にして正統派、こちらも面目躍如といったところでしょう。

以上は、翻訳とその背景にある哲学の違いということの一例です。より面白く、アレンジも逸脱もOKとするか?あるいは、あくまでオリジナルに忠実な正統派であるべきか?けびんこ♥の声が同じ津嘉山さんだからこそ、そこの部分での違いが際立ってくるのです。

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飯森盛良のふきカエ考古学

さて、ここからはリスペクト!けびんこ♥ということで、ふきカエと関係ないこともちょっと書かせてください。今となっては普通に見えますが、この作品の公開当時は、けびんこ♥のあのお坊ちゃまヘアのような髪型が、斬新で衝撃的に見えた記憶が鮮明にあります。しかし、髪型以外はとことんオーセンティックな趣味の持ち主なんですなぁ、けびんこ♥演じるフランクって漢は。良い趣味してんぜ!

シボレー・エルカミーノという車のチョイス。愛用の拳銃がブローニング・ハイパワー。渋っ!! アイウェアはレイバンで、スウェットのトレーニングウェアの時には「ウェイファーラー」、スーツ姿の時には元シークレットサービスらしく「アウトドアーズマン」と使い分けてて、超かっけえ!!

あとこの作品といえば何といってもスーツですよ!ライトグレイからコットンベージュまで、舞台となるLAやマイアミの街によく似合う、軽やかな、それでいて奇を衒わないコンサバな二つ釦のシングルスーツ。タック入りでも決して太すぎないトラウザーズを、クラシカルにサスペンダーで吊って履いてます。ここまではいたってベーシック。シャツは基本は清潔きわまりないホワイト一本に決めてるようですが、しかし、彼ならではのこだわりとひねりは、襟元に宿っていた。タブカラーやボタンダウンでシャツの襟先を留めて、首回りをすっきりタイトに見せるのがフランク流の服装術なのです。そして、タイ。柄は目立たず遠目には単色無地に見えるほどの地味ごのみ。ただ、小さく結んだシングルノットがタブカラーシャツの魔法によってムっクと力強く起き上がり(ネクタイがヘナっとネギの枯れっ葉みたいに垂れ下がってるのはみっともないですからなぁ…)、そこから大きく末広がりに広がっていく大剣は、ほとんど舘ひろし的なバブリー感すらかもし出していて、実に華麗な装いなんです。こうでねえと!コーディネートはこうでねえと!!

彼が朝から晩まで飲んでるのは、決まって古き良きアメリカの伝統飲料オレンジジュースONLY。好きな映画がクロサワの『用心棒』で、好きな音楽はカントリーときた。ご存知「オールウェイズ・ラヴ・ユー」も、そもそもは彼が中盤でホイットニー・ヒューストンを連れて行ったカントリー酒場でたまたま流れてて踊った曲です。この笑っちゃうほどベタなカントリー調ラブソングが、期せずして2人の思い出の曲となっちゃったんで、ラストでホイットニーがカヴァーし、おなじみの「♪エンダーーーイアーーー」バージョンとして大熱唱することになるわけであります。

無論ヒロインのホイットニーも素晴らしいですよね。何が素晴らしいって、歌唱力は言うまでもなくて、肌が!ですよ!! この作品はヒロインのクローズアップをバッチリ切ることが多く、その点でも実に真っ当な演出。こうでねえと!女優撮るときゃこうでねえと!!なんですが、そのアップで判るのは、ホイットニーのぬめやかな褐色の肌、カッパー色のメタリックに光り輝くシルクかサテンのようなキメの細かさ、とにかく美しいってこと!今回、HDワイド画質になることで、その輝きがさらに遺憾なく発揮されることでしょう。

ディズニーの『モアナと伝説の海』をワタクシ一足お先に見たんですが、「いや~小麦色の肌の女って、本っ当にいいものですね!」とつくづく感じましたね。ディズニーとピクサーは一作ごとに新しいCG表現を見せてくれるので、今度もまた物語に感動できるという期待と同時に、今回はどんな新しいCG表現を見せてくれるんだろうか?という点にも大いに期待しているんですが、今作のそれは、ワタクシにとりましては、少女の日焼けした肌の輝き表現でした。私事ながら不肖ワタクシ、海の目の前に住んでまして、毎夏日常的に見かけるもんで褐色の女性の肌の輝きというものをよ~く見知ってるんですけど、『モアナ』は完璧にそれをCGで再現できてました。お話以上に「肌きれー!」というディテールに気を取られちゃうぐらいだったんですが、それと同じくらい見惚れちゃったのが『ボディガード』の時のホイットニー・ヒューストンです。本っ当に美しかった。美人薄命ですなぁ…。

飯森盛良のふきカエ考古学

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ご存知の通り、ホイットニーは2012年に麻薬で亡くなりました。絶頂期の90年代が終わってゼロ年代に入ると、すっかりお騒がせスターになってしまって、大麻で逮捕されたりコカイン中毒になってリハブ出入りしたり、夫のR&B歌手ボビー・ブラウンがたびたび警察沙汰起こしたりDV騒ぎ起こしたりして、スキャンダラスなイメージが定着してしまった彼女。あの美し過ぎた肌も薬物による激ヤセでボロボロに…。そしてとうとう入浴中の薬物中毒で溺死してしまったのでした。(ちなみに愛娘ボビー・クリスティーナ・ブラウンも3年後の2015年にママとまったく同じ死に方で22歳にして急逝…なんたる!)

ホイットニーの葬儀で、けびんこ♥は17分間にもおよぶ感動的な弔辞を読みます。全部は長くなりすぎるので、以下に、良い部分をちょっとだけ意訳・抄訳してみましょう。故人への賞賛あり、参列者に忘れていた笑顔を思い出させるユーモアもあり、そして、最後は感動で落とす、という、たいへん素晴らしい弔辞です。皆さん、心の中で津嘉山さんの声を強く念じながらお読みください(本当に、フル尺ノーカットで津嘉山さんがふきカエてくれないかな、いやマジで!)。

「今日はいくつかお話したいと思っています。皆様がご存知のこともあれば、ご存知ないこともあるでしょう。

実は、『♪オールウェイズ・ラヴ・ユー』は、あの映画には使われないはずでした。本当は『♪恋に破れて』という曲を使う予定だったのです。しかしそれは前の年に別の映画に使われてしまっていて、インパクトに欠けると考えた我々(けびんこ♥はプロデューサー陣の一人でもあった)は、そちらを使わなかったのです。

…さて。私たちは、壊れてしまったこの心を、一体どうしたらいいのでしょうか?

ホイットニーは今日、全てが始まった場所であるこの故郷に帰ってきました。ここに集まった私たち全員、そして国の内外、全世界に向けて、私は呼びかけたい。泣くのはやめ、悲嘆に暮れるのもやめ、そしておそらく怒ることもやめて、ただじっくりと、ホイットニーが起こした奇跡の甘い思い出にひたろうではありませんか、と。

私は、あの頃すでに歌手として大きな名声を手にしていた彼女に、『ボディガード』という映画で共演してほしいと頼みました。彼女は完璧な候補だった。しかし即「それはどうかなぁ」と疑問符がつけられました。彼女に演技経験がない点を指摘されたのです。「別の歌手をキャスティングすることも一応検討してみたらどうか?たとえば…白人の誰かとか」という提案もありました。誰も大声では言いませんでしたが、あれはあれで正しい疑問だったと思います。もっと経験豊富な女優がやるべき役であることは明らかでしたので、私もじっくり熟考してみました。

そして、ホイットニーが黒人だということはとっくに分かりきっている、唯一問題があるとすれば、それは彼女が我々が作ろうとしているこの作品にとって、あんまりにも完璧すぎることだけだ、と私は周囲に訴えたのです(拍手)。彼女がツアーに出てしまい、我々の映画にすぐには出られないことが判明した時には、部屋に安堵感が広がりました。ですが「製作を延期しよう。1年待とう」と私が言ったため(拍手喝采)、不安はすぐにまた戻ってきましたが。

スクリーン・テストの日がやってきて、ヘイメイクが済んだ後で、私は彼女のトレーラーに顔を出してみたのですが、ホイットニーは怯えていました。世界最高のポップスターなのに、自分が完璧かどうか自信を持てずにいたことは間違いありません。自分が相応しいと周囲に見てもらえているとは思えず、間違ったところが何千箇所もあるように感じていたのです。私は彼女の手を取って「君は美しいよ」と言ってあげました。「君の一歩一歩すべてのステップに僕は付き添ってあげるし、この場にいる全員が君の成功を望んでいるんだから」とも言ったのですが、確かに私も少しは心配をしていました。

飯森盛良のふきカエ考古学

私は彼女に言いたかった。どうせ出来レースなんだからと(笑)。スクリーン・テストがどうなろうと気にしなくていい。白目むいてひっくり返って神がかりみたいな支離滅裂なことをわめき散らしたって別に構わないと(爆笑)。そうしたら私が「これは斬新な演技法なんだ」とかなんとかテキトーに言って周囲を説得するので(爆笑)。もっとフォローもしてあげられるし、もっと尻を叩いてあげることもできる。彼女がいてくれるのは良いことじゃないか?

しかし、そんなのはフェアではありません。まず15年前に脚本を書いたローレンス・カスダン(※)にとってフェアではないし、パートナーのワーナー・ブラザーズに対してもフェアではない。そして何より、ホイットニーにとってそれは決して良いことではありません。
※脚本家・監督。コスナーとは監督作『シルバラード』や『ワイアット・アープ』でも組んでいる盟友

彼女は悩みに悩んだ末に「少し時間をもらえれば大丈夫、セットに行くから」と言ったので、その時はお祈りでもするんだろうと思いました。20分して、彼女は出てきました。

…ストップをかけた時に、私たちは、セリフ4つさえ言い終えられていませんでした。

照明を落として、私はホイットニーをセットから去らせ、部屋に帰しました。どこがダメだったのか彼女は知りたがったので、逆に、さっきの20分間一体何をしてたのか知りたいのはこっちの方だと言い返したのですが、彼女の答えは一言、「別に」。「特に何もしてないけど」という答えでした。

そこで、私は彼女が鏡で自分の顔を見れるように、クルリと椅子を回してやったのです。思わず彼女は息を飲んだ。メイクがドロドロに流れ落ちてしまっていたのです。筋になって顔を流れ落ち、もうメチャクチャな状態でした。ホイットニーはこちらのメイクが十分とは思えず、それを全部落として、プロモーションビデオ撮影時のメイクに勝手にしなおしていたのですが、そのメイクが厚すぎて、照明の熱で溶けてしまったのです(爆笑)。

彼女が「…みんなに見られちゃったかな?」と聞くものですから、まあ当然、全員がしっかり目撃しているに決まっている訳ですけれど、「いや、一瞬だったので誰にもバレてないんじゃない?」とは言っておきましたよ(笑)。その時の彼女は、とても小さく、とても悲しそうに見えました。どうしてこんなことをしたのか私は彼女を問い詰め、彼女は「ただ自分のベストを見せたいと思ったの」と答えていました。

名声というものは、口では言い表せないほどの重荷です。「猜疑心」とも言うし「恐怖」とも言う重荷なのです。それは私も背負っていますし、ここにご列席の有名人の皆さんなら全員が持っているということを私は知っています。それは、我々誰もがそこからぶら下がることになるかもしれない、首吊りの木のようなものです。

私は、私を信じてくれるよう彼女に訴えました。信じると彼女は答えてくれた。30分後、彼女はスクリーン・テストを続けるために戻ってきて、そして、スタジオは、彼女と恋に落ちたのです。

私が知るホイットニーは、成功と世界的名声にもかかわらず、「私ちゃんとできてる?」、「私かわいい?」、「私みんなに好かれてる?」なんてことを、まだ気にしていました。その重荷こそが、彼女を偉大にもし、彼女が最後につまずく原因にもなったものなのです。

ホイットニー。私の言葉が今もし君に届くならば、ただ「ちゃんとできてる」なんてレベルではなくて、君は偉大だったんだよ、と伝えたい。君は伴奏も無しに一曲まるごと歌ってくれたね。君があの映画をあれほどまでの作品にしたんだ。私が演じた役なら、他の大勢の主演級俳優たちでも演じることはできただろう。誰にだって演じられた。でもホイットニー、あの時にレイチェル・マローン役を演じられたのは、間違いなく君しかいなかった(拍手)」

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いやはや、歌手ホイットニー・ヒューストンを女優の道に導いたのは、なんとけびんこ♥だったんですなぁ!この女優プロデュース力を買われ、実はけびんこ♥、なんと故ダイアナ妃から直接「私を使って『ボディガード2』撮らない?」と話を持ちかけられ、企画が実際かなりのところまで進んでいたという、嘘のような本当の話まであるんです(そのニュースがコチラ(Walker+ ニュースページにリンクします)。歌手を女優として目覚めさせられるなら、皇太子妃を女優開眼させることだってできたかもしれない。しかし、脚本が上がってきた翌日にダイアナ妃は亡くなってしまったというんですから、返す返すも残念でなりません…。

ワタクシ、小麦色も好きなんですが、実は美白ブロンドのダイアナさんみたいなタイプも、特に若い頃はイチゴ大福とシンデレラと聖子ちゃんカットを足して3で÷ったようで萌え感がハンパなく、かな~り好きだったりしますので(今のキャサリン妃より好みだな)、“女優ダイアナ”のスクリーンでの活躍、濃厚なラブシーン、『ボディガード2』、これは見てみたかった!

ダイアナさんの声優、どなたがやられたら良かったろうか?アントワネットの上田みゆきさんか?甘すぎ?え?田村ゆかりさん?さらに甘いだろ!カバー領域広いとはいえ二児の母だぞダイアナさんは、MILFなんだぞ! そもそも、ゆかりん洋画ふきカエやってるのか?ならば、アンネローゼことグリューネワルト伯爵夫人の潘恵子さんならばどうだ?あの「ジーク♥」みたいな声でやってくれたら、なんかイギリス上流階級英語っぽくは聞こえないか?などと、心にうつりゆくよしなしごとをそこはかとなく考えたところで、今となっては詮なきことですな…。悲しい…。

追伸:今月は、潘恵子vs潘めぐみ母娘ふきカエ競演による、ジュリアン・ムーアvsクロエたその母娘ドロドロ狂信バトルがお楽しみいただける、2013年版『キャリー』もやります。3月19日(日) です。よろしく。