#62 年末大そうじにはご用心!

11月の連休中、わが家の4機のHDDレコーダーのうち3機目が、突然動かなくなった。買ってからまだ3年半だが、修理不可能で、ハードディスクの救済は無理とのこと(長期保証の期間中だったので代わりに新品をもらったけど)。
PCで書いているこの原稿も、保存しないうちに強制終了したりして泣くことがあるが、録画していた数百時間分の番組も、一瞬でパーだもんなあ。スティーヴン・キングの短編に「神々のワードプロセッサ」という、ワープロの削除キーを押せば現実が消せるデスノートみたいな話があるけど、死んだHDDは挿入キーで元に戻すことはできない。ああ無常。

いきなり昔話で恐縮ですが。
俺がテレ東に入った昭和最後の年、テレビ局はまだ一部の番組を16ミリフィルムを出しにして放送していた。
月~金午前帯の日本映画と「2時のロードショー」はほぼ全部、プライムタイムの「木曜洋画劇場」だって半分くらいフィルム出しだったから、「映画部」で最初に覚えさせられたのは16ミリフィルムの編集だった。最初はヘタクソだから、スタインベック(編集機)でフィルムを回しながらうっかり切っちゃって、ちぎれたコマの前後でカットしてスプライス(繋ぐ)したりして。この作業で失われたコマは、ニュープリントを焼かない限り戻らない。古い映画がところどころコマ飛びしたり、時を経て短くなっていくのは、このせいだ。
(余談だが、「映画部」では映画番組の他に、「大江戸捜査網」などの時代劇や「元祖天才バカボン」などのアニメの再放送も担当していた。すべてフィルムだったから。)
洋画の二か国語放送の場合、原音は16ミリフィルムのサウンドトラックに入っていて、ふきカエ音声は独立した「シネテープ」に収録されていた。このフィルムとシネをぴったり合わせて編集し、同時に走らせてオンエアするわけだが、とにかく素材がかさばって、保管が大変で。
でも、フィルムとシネがある限り(ミスって捨てたコマは戻らないけど)、どうにかできるという気がしていた。

平成以降、放送素材はほとんどVTRになった。
基本的な編集は俺でもできるけど、テープ自体の不具合や機材トラブルには技術者でないと対処できないし、誤操作で消してしまったものは戻しようがない。
また、VTRは、1インチ、D2、デジタルベーカム…と、どんどん仕様が変わっていく。デジタル放送になって、数年前まではHDCAMが主流だったが、令和の今はほとんどXDCAMというディスクに。
HDCAMは来年3月で販売終了になるので、現在テレ東もBSテレ東も、放送素材をXDCAMにダビングしたり、データファイルに変換したりする作業を進めている。こういう作業は、VTRメディアが進化する度に繰り返されてきた。

これはハリウッドも同じで、古い素材を何もかもそのまま保存してはおけないだろうから、然るべきメディアやデータに変換していく。
心配なのはその際、必要ないと判断された素材は処分されてしまうこと。
日本でテレビ局が制作したふきカエ音源も、放送終了後は権利元の所有物になるので(このことは再三説明しましたよね)、本国に送られて保存されることも多い。
手元に届いた全バージョンのふきカエ音源をキープしてくれる物好きな権利元なら良いが、大概はそうは行かず、先方が必要と考えるものだけを残して、他はジャンクされてしまう。結果、ふきカエはノーカットの劇場版・ソフト版に一本化され、テレビ版は国内で頻繁に流通しているバージョンだけが辛うじて生き残る。ふきカエ洋画番組が激減した今では大して「流通」しないから、これも望み薄に…。

そういうわけで、皆さんが家庭で私的録画したふきカエはぜひ大事にして頂きたいのだが(いつかその音声をフィールドワークスさんが商品化してくれるかも)、わが家のHDDレコーダーと共に消滅した多数のふきカエ作品を見るまでもなく、儚いものであります。年末の大そうじの際にはご注意を。

あくまで俺個人の考え方だが、映像作品のコレクションにはランクがあって、
①市販のソフトを購入したい作品
②4KやDR(標準)モードで録画保存したい作品
③長時間モードで録画保存したい作品
④観たら消してもいい作品
…と、こんな感じ。
ただ、①や②のような作品は、俺以外にも大勢が市販ソフトを所有していたり、レアものであっても同様に考えて録画した人がいる可能性が高い。
それより心配なのは、③や④のようなぼんやりした作品群だ。この手合いの作品こそ、権利元や放送局にもきちんと保存されず、陽もあたらずに消えていく絶滅危惧種になりがち。

そんなことを考えつつ。
『アイガー北壁』(死んだHDDに録画してた…)以来の新録ふきカエ計画が始動しました!
まだ発表できないけど、これがね・・・上記のランクで言えば、俺にとっては①か②だが、大方の視聴者にとっては③か④かも・・・いや、さすがに④はないか。
でも、ささやかながら、積年の夢を実現した企画です。ここ10年くらいのふきカエは、毎回卒業制作のつもりで取り組んでますが、今度こそそうなるかも。心を込めて作りますよ。詳細は次回!

ダークボのふきカエ偏愛録ダークボのふきカエ偏愛録そして、番宣です。
BSテレ東、12月のイチオシは〈パディントン二本立て〉!
世界中の人気者、クマのパディントンのお誕生日(6月25日と12月25日の2回あるんだって。意味不明)を祝って、
12/23(水)の夜5時58分から 『パディントン』、夜7時50分から『パディントン2』を放送します。
パディントン(ベン・ウィショー)=松坂桃李さん、ブラウンさん(ヒュー・ボネヴィル)=古田新太さんの劇場版だけど、松坂桃李さんのふきカエ、マジ巧いんですわあ。
ブラウン夫人(サリー・ホーキンス)の声が『1』と『2』で違うのは気にしないでね。『2』(ほんと大傑作!)は無料テレビ初放送です。

ダークボのふきカエ偏愛録ダークボのふきカエ偏愛録新年1月は、『がんばれ!ベアーズ』とか『フィールド・オブ・ドリームス』とか、なぜか野球映画が続々。この2本は懐かしのテレビふきカエでお送りしますよ。お楽しみに!

50年以上生きてきて、こんなメチャクチャな年の瀬は初めてだけど、どうか皆さんお元気で。
あえて言いますよ・・・良いお年を!

 

[作品画像はAmazon.co.jpより]
※Amazonのページで紹介しているDVD・ブルーレイ等のソフトは、日本語吹替え音声を収録していなかったり、このページで紹介しているものとは異なるバージョンの日本語吹替え音声を収録している場合や既に廃盤となっている場合もありますので、ご購入等の際はご注意ください。