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『〽Look, a new day has begun…』

…と歌い上げるのは年老いた娼婦猫グリザベラ。それまで劇中では嫌われ疎まれ舞台の端っこにいた彼女が、初めてスポットライトを浴びてステージの中央へと進み出る。感動のクライマックスは何度見ても涙が溢れます。自分も今回映画館で再会して、初めてこの舞台を観た時の感動がよみがえりました。今を去ること数十年前に、ええ、ニューヨークはブロードウェイの劇場で(←さりげなく自慢)
 

『キャッツ』
吉田Pのオススメふきカエル1月24日より全国ロードショー公開中
監督:トム・フーパー
出演:フランチェスカ・ヘイワード ジェニファー・ハドソン
→ 公式サイト cats-movie.jp
配給:東宝東和
© 2019 Universal Pictures. All Rights Reserved.

人間に飼いならされることを拒み、自由に生きる個性豊かな「ジェリクルキャッツ」と呼ばれる猫たち。満月が輝くある夜、年に一度開かれる「ジェリクル舞踏会」に参加するため、街の片隅のゴミ捨て場にジェリクルキャッツたちが集まってくる。その日は、新しい人生を生きることを許される、たった一匹の猫が選ばれる特別な夜であり、猫たちは夜を徹して歌い踊るが……。

ロンドンとブロードウェイでそれぞれ20年もの連続公演記録を樹立した大ヒット・ミュージカル『キャッツ』。日本でも劇団四季による公演がロングランを重ねていて、もはやミュージカルのスタンダードとなっています。わかりやすいストーリーとキャラクターに加え、躍動感に満ちたダンスシーンがその要因でしょう。舞台狭しと飛んだり跳ねたり、何せ猫ですから。自分がブロードウェイで観たときは幸運にも花道横の最前列だったのですが、頭の上を猫がバンバン飛び越えたりしてまあ楽しかったです。

そして今回の映画版。舞台でヒットしたミュージカルの映画化といえば古くは『マイ・フェア・レディ』からアカデミー賞を総なめにした『シカゴ』、近年でも『レ・ミゼラブル』や『マンマ・ミーア!』といったヒット作が生まれています。
本作を手掛けたュージカルの帝王アンドリュー・ロイド・ウェバーの諸作品からも『ジーザス・クライスト・スーパースター』を皮切りに『エビータ』や『オペラ座の怪人』などが続々と映画化され、じゃあ次は『キャッツ』だよね?と期待が高まる中で満を持しての真打登場だったのですが…

いざ全米で公開されるや巻き起こったのは酷評の嵐。「猫にとって犬の登場以来最悪の出来事」とか「5点満点で評価するとしたら“タマネギ”」とか言われ方は様々ですが、総じて「人間の顔と体形をした猫のビジュアルが気持ち悪い」といった印象を持たれてしまったようで。でもさあ、これ『キャッツ』ですよ?キャッツったらヒトがネコのカッコして歌ったり踊ったりするもんだというのは古今東西の共通認識だと思ってたんですが。『トイ・ストーリー』を観て「おもちゃが人間の言葉をしゃべってる!キモい!」って言う人、いないでしょ?それは『キャッツ』も同じことで、要は“そういう世界のお話”なんだからそこんとこはアリにしとかないと映画が始まんないわけですよ。

とは言え観客には『キャッツ』のビジュアルを初めて目にするお子さんとかもいらっしゃるわけで、そう考えると確かにちょっと敷居が高いかなあ、と思わないこともない。そこでお勧めしたいのが同時公開中の日本語吹替え版。実は世界中で公開されている本作で、吹替え版での上映が許されたのは日本とドイツだけなのです。これは我が国の吹替え技術が高く評価されていることの証左でありまして、不肖私も同じ吹替え業界の一員として誠に誇らしい限り。まあ、本作には1ミリも関わってないんですけど。

俳優、声優、ミュージシャンからコメディアンまで多彩な顔触れが揃った今回の“極上”日本語吹替え版ですが、当コラム的にやはり気になるのは声優チーム。“極上”の名の通り、豪華な面々が参加しています。
もはやこの手の作品に欠かせない存在である山寺宏一さんが演じるのは謎の力を使うお尋ね者マキャヴィティ(イドリス・エルバ)。この魅力的な“悪のカリスマ”を山ちゃんが艶っぽく演じます。誰ですか「悪いジーニー」とか言ってるのは。確かにまあ、そう聞こえるけど。山ちゃんは昨年の『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』でもイドリス・エルバを担当していて、悪役がすっかり板についた模様。

そしてこちらもワルの魅力を振りまくマンゴジェリー&ランペルティーザを吹替えるのは、宮野真守&沢城みゆきの売れっ子コンビ。どこか憎めない泥棒猫のカップルを愛嬌たっぷりに演じます。
さらにもう一人、恐ろしい海賊猫グロールタイガー役でドスを利かせるのは怖いといえばこの人、の山路和弘氏。あれ、こうやって並べると声優チームってワルイ役ばっかだな。ちなみに本作にはカサンドラ役で朴璐美さんも出演されていて、山路さんとはしれっと夫婦共演になってます。ヒューヒュー。
それともう一点、今回の吹替え版は日本版の舞台とは歌詞が違っています。吹替えの場合は映像に口を合わせるという命題がありますので、同じ歌を同じ日本語で歌っても必然的に訳詞が変わってくるのですね。舞台版を何度も観ているという方は、そこに注目してみるもの一興かと存じます。

日本でも公開直後から本作のビジュアルに関してはいろんな感想が飛び交っています。もちろん「映画にはリアリティが必要」という意見もありますが、だからってそこらにいる本物の猫がCGで歌ったり踊ったりしても別に驚かな…いや驚くか。ま、映画館なんてそもそもが非日常を体験しに行く場所です。ぜひとも芸達者たちの素晴らしい歌声を聴きながら、しばしファンタジーの世界に身を委ねてみてください。

吉田Pのオススメふきカエル
やっぱり猫が好き。