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ヴァンパイアとは、パイア(鳥)がヴァン(ではない)である!?の巻

【放送情報】
『(吹)インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア[テレビ東京版]』番組紹介ページ
『(吹)インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア[フジテレビ版]』番組紹介ページ

9月、当チャンネルの懐かしふきカエ企画では、『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』をお届けするんですが、これについては、ちょっとしたすったもんだがありましてねぇ。そのお話をしましょう。

吸血鬼の研究がしたくて大学に行ったワタクシ。浪人中に本作を見に劇場に行った頃こそが、吸血鬼マイブームのまさにMAX期でした。その当時は「中二病」という便利な言葉はまだできてません。異様に肌をホワイトニングし、カラコンを入れ、整形して耳と犬歯を尖らせ、黒い服だけ着て昼夜逆転生活で生きていこうか、と本気で考えていた19の冬のワタクシであります。中二の話じゃないんです。19歳だったんですが(やらなくて本当よかった!)、とにかく、本作の荘重なまでの闇の映像世界に、その美に、もう、アヘアヘにヤラれちゃいましたねぇ。そんな我が青春の作品が、仕事上のトラブルとなって丸坊主の40のオッサンとなったワタクシを悩まそうとは、神ならぬ身のなんぴとがあの頃予想しえたであろうか!

飯森盛良のふきカエ考古学
TM & © Warner Bros. Entertainment Inc.

…閑話休題。実は、5月にもうこの作品はふきカエで放送してるんですが、この時は、ゴールデン洋画劇場版を放送すると言っておきながら手違いから木曜洋画劇場版を流す、という大失態を演じてしまいまして…。お客さんからのクレームで間違いに気がつき、急ぎゴールデン洋画劇場版も手配してゲットし、1998年当時の旧式テープをHD化して7月に放送した、というすったもんだがあったのです。実にお恥ずかしい話。HD化でカネが倍かかっちゃった。

とはいえ怪我の功名という言葉があります。転んでもタダでは起きないとも言う。9月、『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』の木曜洋画劇場版とゴールデン洋画劇場版を2週連続見比べ企画として再放送いたしますので、この機会、お見逃しなきように。

ときに。以前「南部は超イケてる!」という内容の駄文をこの場で披露しましたが、この『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』もまた素晴らしき南部映画の1本。というわけで、そういう面でも個人的に大好きな作品なのであります。

ヴァンパイアってのは本来ヨーロッパのもので、よく考えるとアメリカっぽくはない。あまりにもアメリカ映画でポピュラーになりすぎちゃったので、そうだと感じづらくなっちゃってますが。

ヴァンパイアは東欧が発祥で、その東欧の伝説に触れた、隣接する中欧のドイツ人やオーストリア人が、18世紀にまず好奇心を抱いたんですなぁ(彼らは東欧で“実際にあった”とされる吸血鬼パニック珍騒動を大真面目にレポートしている)。そこらへんの史実をちょっとだけ盛り込んでいる『悪魔の入浴・死霊の行水』というとんでもない邦題のイタリアの吸血鬼映画もあるんですが、それは余談ということで今回は置いときましょう。

続いて19世紀末、ゴシック・ホラーの流行期に、英国のアイルランド人作家ブラム・ストーカーの小説『吸血鬼ドラキュラ』がヒットしてブームが西欧を舞台としたセカンドシーズンへと突入。この小説は、東欧の秘境に住むドラキュラ伯爵が渡英してヴィクトリア朝のロンドンを恐怖のどん底に陥れるというお話ですが、とにかくヴァンパイアといったら本場は、おヨーロッパなのです。

アメリカ映画でそんなヨーロッパ感を出すのにうってつけなのが、この『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』前半の舞台となる街、ニューオーリンズです。アメリカっぽくない。フランス人が築いた街で、劇中でも、トムクル演じるヴァンパイア・レスタトは、やたらと純血のフランス系であることを自慢しております。

トムクル、テレ東版では森田順平さんがアテているのですが、ヒュー・グラントやコリン・ファースのFIXだけあって、こちらはノーブル感・おヨーロッパ感漂うデカダンなヴァンパイア・レスタトになっています。

対するフジテレビ版は江原正士さん。なんというか、斜に構える感というか、世の中ナメてる感がよく出ていて、飄々としたヴァンパイア・レスタトになっています。あえてのオカマ感も若干漂っているような気が。気のせいでしょうか。

トムクルに触れた以上は主役のブラピ氏にも触れておきましょう。テレ東版は堀内賢雄さんなので、真面目で朴訥な普通人、といった感じです。そんな平凡なブラピが吸血鬼として無限の時を生きねばならなくなった、という、ある種のギャップ萌えが見事に生まれています。ちなみに堀内さん、フジ版ではインタビュアーのクリスチャン・スレーターをアテていて、両方に出ている。

フジ版のブラピは宮本充さんで、メランコリックで内省的・厭世的なブラピに仕上がっております。

ということで、

飯森盛良のふきカエ考古学
TM & © Warner Bros. Entertainment Inc.

【テレ東版】ノーブルなトムクル×普通人ブラピ
【フジ版】 斜に構えたトムクル×厭世的なブラピ

と、同じトム攻めブラピ受けのカップリングなのに微妙にキャラの差別化ができていて(えっ?これってそういう映画ってことでいいんですよね!?)、印象が多少違う仕上がりになっています。ワタクシ自身はフジ版を録画して何度も見ておるのですが(ワタクシの個人史でTV洋画劇場を通じて見たかなりラストの方の作品)、実はテレ東版は今回が初見だったのでありますが、こちらも全然良い!いゃあ、ふきカエって、本っ当にいいものですね!

それと、ただニューオーリンズを舞台にしただけでは、おヨーロッパ感はそう簡単には漂ってきません。この映画に重厚さと本物感を与えているのは、プロダクション・デザインの功績も大きい。手がけているのは大御所ダンテ・フェレッティ。イタリアでフェリーニ作品を手がけ、さらにアメリカにおいては『アビエイター』と『スウィーニー・トッド』と『ヒューゴの不思議な発明』でアカデミー美術賞に3度輝いている。ほうら、これらの作品、どのカットも絵に重厚感が漂ってましたよね?本物感がありましたよね?古き良き時代がスクリーンの中に蘇っている感が、ハンパなかったでしょう? これっていうのが、プロダクション・デザインの力なのです。

まさに、荘重としか言いようのない映像美。おヨーロッパ感を漂わせる、あるアメリカン・ヴァンパイアについての、絢爛たる一代記。ふきカエで見ていくらハマったって、整形して耳を尖らせようとかカラコン入れて昼夜逆転生活送ろうとか、イタいことは考えちゃダメだぞ。それじゃあとでまた会いましょうね。

※ここで最後っ屁のような蛇足、ご勘弁を。「ヴァンパイア」という語ですが、ヴァンは「〜じゃない」という接頭辞、「パイア」は「鳥」とか「翼」とかを意味する言葉でして、つまり「鳥じゃないもの」、「鳥のように見えて実は違うもの」という意味です。これは古いスラヴ語。確かに「ヴァンパイア」という語がスラヴ・東欧に起源を有していて、吸血鬼は東欧起源という一般的なイメージもあながち外れてはおりません。ただし、その「鳥のようで鳥じゃないモンスター」というのは、実はこれ、古代ギリシア・ローマの民間伝承に出てくる「ストリクス」という妖怪をさしておりまして、すなわちヴァンパイアは古代ギリシア・ローマまでルーツを遡れるのです。「ストリクス」というのはフクロウのこと。フクロウって鳥みたいだけど普通の鳥とちょっと顔が違いますよね。「鳥目」なんて言葉がありますが、その逆。夜でも遠くを見通せる不思議な視力を持っていて、なにやらスーパーパワーめいた魔力めいたものを感じさせる。そこが不気味だってんで、妖怪あつかいされたのです。ローマ時代に乳幼児が原因不明で突然死したりなんかすると「ストリクスに呪われたせいだ!」なんて責任をしょわされたのです。さらにルーツを掘り進めると、古代メソポタミアで男児に憑いて殺すリリスという女の悪霊がいるのですが、そこまでさかのぼれます。…ってオレ様すげー!Wikiも何も見ずにスラスラここまで書けちゃったぜ。なんせこれ、卒論のテーマでしたから。いや〜若い頃の勉強はするもんですなぁ。でもこの知識、もちろん、クソの役にも立たないことは、言うまでもない…。これが大学卒業後、初の開陳となります。ふきカエとまるで関係ない余談にお付き合いいただき、ありがとうございました。それでは、サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ。

【放送情報】
2015年9/17(木)深夜3:45~
『(吹)インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア[テレビ東京版]』番組紹介ページ
2015年9/10(木)深夜3:30~
『(吹)インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア[フジテレビ版]』番組紹介ページ