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ふきカエ界のロイ・バッティーが最期に遺す、ついに出た!『マッドマックス 怒りのデス・ロード』ザ・シネマ新録ふきカエ版!!の巻

飯森盛良のふきカエ考古学

前回、ワタクシ「ザ・シネマを離れることになりましたもので!」で原稿は終わったわけですが、もう、完全に離れました!! 今はノマドとなりて正義のため闘っている毎日。

でも、ふきカエなど一部企画は引き続き“お手伝い”をしてます。ワタクシとしては『LIFE!』新録を最後に勇退する気満々だったんですが…。

あれを花道にできてたら、サラリーマンにとってこれほどの去り際はなかった。商売抜きで生涯ベスト級に好きな映画ですし、ワタクシ主人公ウォルター・ミッティーとほぼ同い歳で、長くプロとしてやってきた仕事で最後に代表作・集大成という作品を遺し古巣を去れる、ということだと、劇中とのシンクロ率は400%を優に超え、デストルドー反応でソレノイドグラフ反転、自我境界が弱体化していきこのままでは個体生命の形が維持できなくなる寸前でしたね。まあ要は、映画の内容と一心同体化したよ、って話。

しかし、心残りなことも無くはない。新録ふきカエを作るべきBIGタイトルが、日本にはまだ幾つか残されたままですから。大先輩・吉田Pが前回連載の、毎度おなじみ愉快なマクラの部分で奇しくも言及されていたとおり、最大級にデカい大ネタが残ってますんでね!

繰り返しますが、宣伝効果を期待しタレントふきカエを作る発想自体は解るし、批判してません。また「この映画はタレントふきカエ版がMyベスト」ってことがあると理解もしてます。ワタクシ個人にしたってWユージ版『バック・トゥ・ザ・フューチャー1』と村野武範のマクレーン刑事がMyベストなので「恋は理屈じゃないの!好きになっちゃったんだからしょうがないじゃん!!」という純情もよく解ってます。

ダークボさんも連載で書かれていたとおり、バリエーションさえあればいいのです。タレント版があってプロ声優版もある。それが正しい。公開時に話題作りでタレント版が作られ、賛否両論あるかもしれないけどそれ含めて盛り上がって、そして次は、匠たちの声技によるプロ声優版も作られる。そうあるべき。

ふきカエは、戦後復興の時代に生まれ今や60年以上の歴史を誇ります。極東の島国である日本で、外国の映画やドラマなど世界の映像文化をハードル低く鑑賞するために、発展・進化してきた。プロの技術者がいて匠がいて、鑑賞者はその妙技を味わうという、立派な“文化”なのです(ついでに。ふきカエ否定論は「ロックは害悪」とか「マンガはバカになる」とか「ゲームは依存症になる」などと程度が同じ文化否定であり、暴論でしょう。人それぞれ好き/不好きはあるにせよ、否定される筋合いのものではありません)。

だから、タレントふきカエ版しか存在しない映画には、別の選択肢が作られねばならない、プロ声優版も必要なんだ、とは、強く訴えたい!

『LIFE!』を最後に、ウォルター・ミッティーになったつもりで美しく勇退することができず、「引き続き手伝って」と頼まれ残ることにしたのであれば、せっかくなので選択肢を作らねばならない作品が、あります!ワタクシに残された、新録ふきカエPとしての最後の力を振り絞り、何が何でも遺さねばならぬ作品が!!

組織上は完全にザ・シネマを外れておりますので、今までのように独断即決で何でも決められる立場でもなく、予算もドカンと預けられてて予算内であれば存分に暴れてみせよ、という白紙委任状を授かっている訳でもない。ワタクシの力は日に日に弱まり、もはやウォルター・ミッティーではなく気分はすっかりロイ・バッティーに近い。

そう言えば、ワタクシが最初にプロデュースした新録ふきカエは2011年の『ブレードランナー』でした。あれはタレントではなく、匠の中の匠・堀勝之祐さん版が既存であったのですが、ハリソン・フォードFIXの磯部勉さんバージョンもどうしても個人的に見てみたく、同感な人も世間には多かろうと、初めて作ったのでした。ロイ・バッティー役の谷口節さんと亡くなる前年に一度限りお仕事できたことも、身に余る光栄です。

ロイ・バッティー。レプリカント(人造人間)として与えられた4年の製品寿命が、そろそろ尽きつつある。しかし今ここで作動停止(=死)するわけには絶対にいかない。まだやり残した仕事がある。体が停止しかけてくる。手も動かない。「まだだ、待てぇ、まだだぁ…(CV:谷口節。岸田恵子訳ザ・シネマ新録版より)」とつぶやき、拳を噛んだり手の平に釘をぶっ通したりして、感覚を取り戻そうと悪あがきします。

しかし、無情にも製品寿命は近づいてくる。ワタクシも今、ちょうどあの状態。完全作動停止までに何ができる?何を遺せる?狼の遠吠えを真似しプリスの血でウォーペイントしながら、ロイ・バッティー的闘いを続けておるところ。ノマドでウォルター・ミッティーでロイ・バッティーなスキンヘッドの中年アジア人男性。一体なにもんなんだオレは!

最期は、土砂降りの中、ボクサーパンツ一丁になって、

「俺は、お前たち人間には信じられない物を見てきた。
 オリオン座のそばで炎を上げ燃える宇宙船。タンホイザーゲートでユラユラと煌めくオーロラも見た。
 そういった思い出も、やがては、消える。
 涙が、雨で、消されるように。
 終わりの時が来た…
(CV:谷口節。岸田恵子訳ザ・シネマ新録版より)」

とつぶやきながら、完全作動停止のその瞬間を迎える覚悟を決めております。

さぁ、残された時間は少ない。とりあえず、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』の新録でも、作っときましょっかね!?

これも公開時にタレントふきカエが作られ、 トム・ハーディのEXILEのAKIRAさんとイモータン・ジョー役竹内力さんが当時話題をさらい、ジョージ・ミラー監督来日時には一緒にプロモーションに登場という、『LIFE!』のナイナイ岡村さんに勝るとも劣らない宣伝上の大成功を収めました。が、声のプロフェッショナルによる匠バージョンも第2の選択肢として必要であることは、ここまでルル書き連ねてきたとおりであります。

まぁ、ワタクシが作るのであれば普通に、

トム・ハーディ…宮内敦士さん
イモータン・ジョー…安原義人さん
シャーリーズ・セロン…当然のことながら本田貴子さん続投

で。

すでにして変化球であるタレント版に対し直球版を作れ、というのが、ふきカエ界のロイ・バッティーことワタクシに課せられた使命ですので、変なはずしキャスティングやって自分だけ面白がる気はゼロなのですが、安原さん起用はちょっと遊ばせてもらっちゃいました。ご存知のとおり旧シリーズ123でメルギブ演じるマックスの声を担当されたのが安原さんですので、ウチの『デス・ロード』では悪のラスボス役に。ちょっと自分だけ面白がっちゃってる?でもイモータン・ジョー合いそうでしょ?

今夏のお届けを目指して、制作に入ります!

あとは、ワタクシがMyベストだと言い続けている、村野武範フジテレビ版ゴールデン洋画劇場バージョン『ダイ・ハード』シリーズ。すでに普通に1から『ラスト・デイ』までの全5本を樋浦勉バージョンでザ・シネマのスタッフがお送りしているはずですが、ワタクシのセレクションとして村野版123も夏頃オンエアを目指してます。ま、123までしか村野さんはやってないのでね、中途半端なのは仕方ない。

飯森盛良のふきカエ考古学さらに、これは6月ですが、なんとダークボ大先輩が今年、新春早々BSテレ東で放たれた新録版、というか初録版『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』を、半年遅れでザ・シネマで放送させていただけることになりました!(詳しくはココ)。実はウチはCSということで完全ノーカットでお届けでき、それというのもダークボさんがそんなこともあろうかとノーカットで作ってくださっていたおかげなのですが、実にTV洋画劇場のイズム溢れるセリフ演出となっております!それこそが、上述の「鑑賞者がその妙技を味わう立派な文化」ってやつね。AI翻訳じゃないんだから直訳したってしょうがないのであります(そういうことを配信では強く求められる、と風説に聞きます。寒い時代だとは思わんか…)。

飯森盛良のふきカエ考古学加えて同6月、ふきカエル大作戦プレゼンツ“凄ワザ吹替えプロジェクト”特別編として、2016年末にブルーレイ収録用に制作された、にも関わらず、やはり「“洋画劇場”全盛期のスピリッツを受け継いだ」という姿勢が大変ご立派な、「鑑賞者がその妙技を味わう立派な文化」としての現代版懐かしふきカエ、新録版というか初録版『長く熱い週末』も、ザ・シネマでお届けします(詳しくはココ)。

ということで、ワタクシとふきカエル大作戦のせっかくのご縁もフルに活かし、大先輩たちが作られた近年や昭和の昔の文化遺産を改めて世に送りながら、なおかつ、自分でも新録版をプロデュースしつつ、涙が、雨で、消されるように、終わりの時が来るその日まで(CV:谷口節)、まだまだ悪あがきしますよ!

『マッドマックス 怒りのデス・ロード』© Warner Bros. Feature Productions Pty Limited, Village Roadshow Films North America Inc., and Ratpac-Dune Entertainment LLC
『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』© 2016 Speedee Distribution, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
『長く熱い週末』©1979 Handmade Films (1981) Partnership