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『…雨の中の…涙のように…』

「…死ぬ時が…来た…」
降りしきる雨の中、最後の独白と共に息絶えるレプリカントのロイ・バッティ。その頭上を、彼の魂が乗り移ったかのように白い鳩が飛び去ってゆく。映画史上に残る屈指の名シーンだが、その台詞が実は演じたルトガー・ハウアーのアドリブで、鳩を飛ばすのも彼のアイデアだったという話、本当だろうか。

『ブレードランナー 2049』

吉田Pのオススメふきカエル
10月27日より 全国にて公開
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演:ライアン・ゴズリング ハリソン・フォード
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
公式サイト:
www.bladerunner2049.jp

人間そっくりに作られた人造人間「レプリカント」の反乱から30年後の2049年。今また新たな脅威が人間社会を襲おうとしていた。ロサンゼルス警察に所属する新人ブレードランナーの”K”は、社会を揺るがそうとする危機に際し協力を仰ぐため、ある人物の捜索を命じられる。彼の名はリック・デッカード。かつてレプリカント」の反乱を阻止し、その後30年の間行方不明になっている伝説のブレードランナーだった…

 
1982年の映画『ブレードランナー』は鳴り物入りで公開されたものの、興行的には今ひとつの成績。自分が観た時も新宿ミラノ座はガラガラだった。「(スター・ウォーズの)ハリソン・フォード主演のSF映画」となればもう少し当たってもよさそうなものだが、そこから連想される“大宇宙が舞台の壮大なスペース・オペラ”とはかけ離れた内容に、一般の観客は却って戸惑ってしまったのかもしれない。
配給元の日本支社もそれを予期してか「2020年、レプリカント軍団が人類に宣戦布告!」「新人類宇宙より飛来!」等々派手なキャッチ・コピーで宣伝を行うも功を奏さず。いや確かにどっちも間違っちゃいないんだけど、つまりそういう映画じゃあなかったのだ。

冒頭に映し出される未来のロサンゼルス。そびえ立つ高層ビルの間を縫ってハイテク・カー“スピナー”が飛び交う足元に拡がるのは、雑然としたスラム街。陰鬱な表情でひしめく労働者たちの上に、酸性雨が絶え間なく降り注ぐ。テクノロジーの進化と社会の荒廃が混然となったディストピアは、まさに“誰も見たことがない未来”。巨大な「強力わかもと」の広告ディスプレイや、日本語を話す屋台のオヤジを例に出すまでもなく、リドリー・スコット監督の描く未来イメージはアジア的な混沌に満ちていた。
本作の三年前に公開された同じ監督による『エイリアン』でも、貨物宇宙船ノストロモ号の機関部は「このフネって蒸気で動いてんのか?」と思わせるほどローテクなガジェットが雑多に組み込まれていたので、これはつまり監督の趣味だろう。

そうしたビジュアルと、ある種哲学的なストーリーはSFマニアや映画ファンの心を鷲掴みにし、『ブレードランナー』はカルト・ムービーとして熱狂的な支持を得た。その一因が、アメリカと(返還前の)香港の合作という特殊な状況で製作された本作で、初期のシナリオから現場での撮影時までに度々の改稿を重ねた結果、整合性や状況説明が不足している点がいくつか散見されること。
ハイエナの嗅覚を持つマニアたちが、そこに食いつかないはずがない。「台詞じゃ“潜入したレプリカントは6名、うち1名は死亡”と言ってるのに映画には4人しか出てこないぞ?あと1人はどこだ?」「実はデッカードもレプリカントじゃないのか?なんか表情がぎこちないぞ(←いやそれは中の人の演技力が…)」「あの屋台の爺さん、何が“ふたつで十分”なんだ?」云々。

一方の作り手にとっても、斯様に未完成のまま劇場公開されたとなれば、後日パッケージソフトがリリースされる際にはあちこち直したくなるのが情というもの。結果、劇場公開版>完全版>ディレクターズ・カット>ファイナル・カットとリリースの度に修正が繰り返され、メディアもVHSからレーザーディスク、DVDを経てブルーレイへ。ファンとしてはもうええ加減にせえよとブーブー言いながらも購入を続けること数十年、ついには夥しい数のパッケージソフトが棚の一角を占拠する事態に。家人の「何でブレードランナーがこんなにあるの?これとあれはどこが違うの?」という問いに、我が意を得たりと懇切丁寧な解説を試みるも、当然ながらはかばかしい反応は帰って来ずに孤独感のみが募るのであった。嗚呼。

そんな日々を粛々と過ごすこと三十年。何度か出ては消えを繰り返していた続編製作の噂が、『ブレードランナー2049』として実現した。
メガホンを取ったのはカナダ出身のドゥニ・ヴィルヌーヴ。アメリカで撮った長編第一作の『プリズナーズ』が批評・興行ともに高く評価されたのに続き、今年公開された『メッセージ』では、難解な原作を見事に映像化した手腕がSFファンからも賞賛されている。
快作『ナイスガイズ!』や、大ヒットした『ラ・ラ・ランド』で今が旬のライアン・ゴズリングを主演に迎え、遂に実を結んだ30年越しの悲願。
劇場でかかった予告編の終盤、暗闇からデッカード=ハリソン・フォードが姿を現した時、客席からは期待と驚きの入り混じったうめき声が漏れていた。

さて、そこで肝心の日本語吹替え版の話題。旧作の吹替え版が初めて作られたのは1986年、TBS「月曜ロードショー」での放送版。リック・デッカード(ハリソン・フォード)=堀勝之祐、ロイ・バッティ(ルトガー・ハウアー)=寺田農という布陣だった。
俳優としては線の細いイメージの寺田氏が屈強な戦闘用レプリカントを演じたわけだが、その基礎体温の低そうな台詞回しには人造人間の怒りと悲しみが繊細に表れていて、特に終盤でビルの屋上から下界を見下ろして言う「見ろ!人がゴミのようだ!」は名台詞として後年まで語り継がれている(すいません後半はウソです)。

そして月日はめぐり2011年。CSの映画専門チャンネル「ザ・シネマ」での放送用に、ファイナル・カット版の吹替えが新規に製作される。これは当「ふきカエル大作戦!」のコラムで御一緒させていただいている同チャンネルのプロデューサー、飯森盛良氏の差し金(…は言葉が悪いか。奸計?謀略?)によるもの。
近年ではハリソン・フォードのFIX声優となっている磯部勉氏がデッカードを演じたこのバージョンは、現在発売中のファイナル・カット版ブルーレイにも収録されている。今は亡き谷口節氏が演じたロイ・バッティも、寺田版とはまた違う硬質な魅力に満ちていた。

そして今回、満を持して劇場公開される『ブレードランナー2049《日本語吹替え版》』、その出演声優は…


…ごめんなさい、まだ情報解禁前なので言えないんです(爆)

…とはいえわが国には、ブレランを愛してやまないファンがたくさんいらっしゃることは製作側も百も承知。そうしたいろいろ面倒くさいファンの皆様の期待を裏切らない、真っ向から直球勝負の正統派吹替え版になっていることだけは自信を持って申し上げておく。乞うご期待。

 

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これひとつで十分ですよ!信じてくださいよ!